輪番制のマンションで理事への就任を拒否できるのか|断れるケース、辞退させないアイデアなど紹介
「輪番制のマンションで理事に就任してほしいと言われた。何とか断れないか。」とお悩みの方へ。
マンション管理組合役員のなり手不足を解消するアイデアとして、役員の輪番制を採用する管理組合があります。
輪番制を採用するマンションでは、「必ず自分の順番が来る」ため、公平ではあるものの、さまざま事情により理事に就任できない方は、「何とか断れないか」と考える方も多いかと思います。
今回は、静岡県伊豆エリアのマンション管理士事務所「かなざし事務所」が、輪番制のマンションで理事への就任を拒否できるのかについてくわしく紹介します。
目次
マンション管理組合の輪番制とは|メリット・デメリットなど
輪番制とは、区分所有者が順番で役員に就任する方法のことを指します。
ちなみに、マンションの役員選出方法は輪番制のほかに以下のようなパターンがあります。
- 立候補
- 推薦
「公平性」という観点から輪番制を採用するマンション管理組合も多いのですが、メリットだけではなく、デメリットもあります。
輪番制のメリット
輪番制のメリットは、以下のとおりです。
- 人員を確保しやすい
- 公平性が保てる
- 特定の人に負担が集中することを避けられる
- 特定の人が長期間役員に就任することを防止できる
基本的に、マンションの管理組合の理事は、ボランティアで行なわれることが多く業務量も多いため、やりたがらない人が多いです。
ただし、分譲マンションの区分所有者は管理組合の組合員となり、一般的には管理規約により「理事○○名」の就任が必要になるケースが多く、「誰かが理事をやらなければならない」状況になります。
輪番制にすることにより、特定の人に負担が集中するを避け、公平に負担を分担することができるのが大きなメリットです。
輪番制のデメリット
輪番制のデメリットは、以下のとおりです。
- 継続性を維持しにくい
- 無責任な人が就任することもある
輪番制は、期ごとに役員が変わるため理事会活動の継続性が維持しにくいことが大きなデメリットです。
例えば、前期の理事会で「○○を修繕する」と決めていても役員が変われば、一から検討し直しになることもあります。
また、引継ぎがされないと、今まで実施されていたことが継続されないこともあり、結果として区分所有者が混乱するケースもあるため注意しましょう。
上記のようなデメリットを解消するには、以下のような方法があります。
・旧理事から新理事への引継ぎをしっかりと行う
・任期を2年以上にする
・半数改選にする
特に、理事全員が毎年交代するようなマンションでは、任期を2年として半数ずつ交代する半数改選を採用することにより、継続性を維持しやすくなるのでおすすめです。
輪番制で理事への就任を拒否したい場合の断り方
管理組合と役員の法律関係は委任契約であるとされています。
したがって、管理組合が総会によって選任し、その候補者が承諾することにより理事になるという位置づけであるため、理論上は承諾しなければ委任契約は成立しないとみなされます。
つまり、輪番制による理事への就任に関しては法律的な強制力はなく、最終的に承諾をしなければ理事への就任を辞退することも可能です。
しかし、輪番制で理事への就任を打診された場合、やむを得ない事由がない限り断るのは得策ではありません。
輪番制は全員で理事や監事を担当することが前提となっており、簡単に断れるのであれば、輪番制自体が成り立たないからです。
ただし、さまざまな事情があり、どうしても理事への就任が困難な場合は、断れる可能性もあります。
仕事が忙しいから断る
「仕事が忙しいから」と輪番制の理事就任を断るのはおすすめできません。
多くの方が、仕事をしていても理事や監事になっているからです。
しかし、「仕事の都合で理事会に出席できない」など就任しても「理事会にほとんど出席しない名ばかり理事」になってしまうのは、管理組合にとっても良いことではありません。
仕事を理由にして輪番制の理事への就任を断る場合には、「なぜ、仕事と役員活動を両立できないのか」を説明し、理事会を納得させることが必要です。
健康上の理由により断る
ご自身やご家族が健康上の理由を抱えている場合、理事への就任を断れる可能性があります。
また、高齢により理事への就任が困難な場合もあるでしょう。
このような理由がある場合には、「どのような健康上の理由を抱えていて、なぜ理事へ就任できないのか」を明確に説明する必要があります。
代替案を提示する
管理組合側としては、次期役員が見つからないと「理事会が成立しない」「現任の方がやむを得ず任期を延長しなければならない」などさまざまな問題が発生します。
また、「輪番制での役員就任を簡単に断れる」状態にすることは、公平性の観点からも好ましくありませんから、立場的に「簡単に理事への就任を断ることを承認できない」状態にあります。
「できないから他を当たってくれ」など強行すると、トラブルになる可能性もあるため、以下のような代替案を提示してみましょう。
- 今ある問題が解消した時点で理事へ就任することを確約する
- 知り合いなどに理事への就任をお願いする
管理組合側から輪番制で理事への就任を断らせないようにするためのアイデア
管理組合運営を円滑化するためにも、「簡単に輪番制で理事に就任することを断らせないようにする」ことが大切です。
ここでは、管理組合側から輪番制で理事への就任を断らせないようにするためのアイデアを紹介します。
協力金を徴収する
輪番制で理事への就任を辞退したものに対して「理事会協力金」を支払うことを義務付ける方法があります。
本来、マンションの管理組合を運営するにあたって必要な業務は本来その構成員である組合員全員が負担すべきであるという理由から、管理規約に記載した上で、徴収することは可能です。
ただし、理事を辞退する組合員に協力金を負担してもらうことが、一部の組合員に「特別の影響を及ぼす」場合には、その組合員の承諾を得なければなりません。
一部の組合案に特別の影響を及ぼすかどうかは、協力金の額が1つの基準となり、概ね月額数千円程度であれば正当であると認められるケースが多いです。
輪番制を採用していることを周知する
管理組合運営に無関心な方は、「理事への就任が輪番制になっていることを知らなかった」というケースもあります。
以下のような方法により、理事へ就任しやすい環境をつくることが重要です。
- 輪番制を採用している理由などを周知する
- 輪番表を事前に共有する
- 理事への就任願いは早めに通知する
- 断る場合には理事会へ出席してもらい、理由を説明していただく など
任期を1年にする
任期を1年にすることで、「1年くらいなら・・」と理事への就任を承諾しやすくなります。
ただし、理事会の継続性が維持しにくくなるため、「半数改選にする」「十分な引継ぎ期間を用意する」などの工夫が必要です。
リモート会議を導入する
理事会をリモートで開催する、リモートで出席できるようにするなどの工夫により、遠隔地からでも理事会に出席しやすくなります。
特に、リゾートマンションのように定住していない組合員が理事になるケースでは、理事会に参加するのが大変であるため、リモートで参加できる環境を整えることにより、理事に就任しやすくなります。
外部専門家を活用する
例えば、マンション管理士などの外部専門家に理事会の仕事を任せることにより、理事の負担が軽減します。
場合によっては、第三者管理方式にすることで理事をやらなくてもよい状況にすることも可能です。
マンション管理組合の業務を外部委託するメリット・デメリットについては以下の記事で確認できます。
>マンション管理組合の業務を外部委託できる?|第三者管理方式のメリット・デメリットや費用などについて解説
まとめ
今回は、「輪番制による理事への就任を断れるのか」という問題について紹介しました。
マンション管理組合運営においては、公平性の観点からもやむを得ない事情がない場合には理事への就任を引き受けましょう。
健康上の理由や仕事の都合により、どうしても就任が難しい場合には、しっかりとその理由を理事会に説明することが大切です。
今回紹介した情報が、輪番制による理事への就任についてお悩みの方の参考になれば幸いです。
静岡県伊豆にあるマンション管理士事務所「かなざし事務所」は、マンション管理組合運営についてのさまざまな疑問やお悩みを解決するプランを提案いたします。
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