初めてのマンション総会の進め方|荒れない総会にするための手順とポイントをマンション管理士が解説
役員になって初めてのマンションの総会は、誰しもが緊張するものです。
マンションの総会は、何事もなくスムーズに終わることもあれば、紛糾して総会が荒れることもあります。
もちろん、総会で決議すべき議案にもよりますが、役員になって初めての総会はスムーズに司会進行したいでしょう。
そこで今回は、初めてのマンション総会の進め方の手順や荒れない総会にするためのポイントなどを紹介します。
目次
初めてのマンションの総会の進め方
マンションの総会は、管理会社のフロントマンが司会進行することが多いですが、本来は管理組合主体で行なうべきものです。
また、総会が間違いなく行われた証として、総会議事録を作成するのが通例ですが、議事録署名人や総会の定足数の確認などが必要であることに注意しましょう。
慌ててなし崩し的に総会を開催すると、あとから「議事録署名人の指名」を忘れたり、「定足数の報告」を忘れるなど問題になることがあります。
そして、毅然とした司会進行をしっかりと行わないと、無秩序な総会になることもあり、無駄に多くの時間を費やすことになります。
多くの住民の皆様が、気持ちよく総会に参加できるようにまずはマンションの総会の進め方について確認しておきましょう。
総会までに準備すること
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約においては、マンションの通常総会は、原則的に1年に1回新会計年度開始から2ヶ月以内に招集しなければなりません。
例えば、3月末決算なら5月末日までに通常総会を開催する必要があります。
もちろん、標準管理規約ではそうなっているだけの話で、管理規約によっては3ヶ月以内の場合もあります。
(総会)
出典;国土交通省ホームページ「マンション標準管理規約(単棟型)」
第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集
しなければならない。
4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時
総会を招集することができる。
5 総会の議長は、理事長が務める。
また、マンションの通常総会の招集手続きについては、下記のような規定もありますので、注意しましょう。
こちらも、マンションの管理規約を確認しましょう。
標準管理規約では、少なくとも会議を開く日の2週間前となっていますが、昨今の郵便事情も加味すると、出席者を多く集めたければ、3週間前くらいには発送したいところです。
(招集手続)
出典;国土交通省ホームページ「マンション標準管理規約(単棟型)」
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議
の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)
までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催する
ときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければ
ならない。
また、通常総会の議案書の発送と同時に、マンションの掲示板などに総会の開催案内を掲示するなどの配慮も大切ですね。
このように、マンションの総会開催には、管理規約に沿った招集手続きが必要なので注意しましょう。
マンションの総会当日の進め方
次に、マンションの総会当日の進め方について解説します。
STEP1:総会は必ず定刻に開催する
総会は必ず、定刻に開催するように段取りしましょう。
マンションの役員は、総会開催の15分前には会場に集合し、下記の事項をチェックしましょう。
出席者の確認をする役員の座る位置を確認する
定刻までに議決権行使書、委任状を含む出席者の数を確認しておくことが、総会をスムーズにする進め方のポイントです。
そして、秩序を維持するためにも、定刻には必ず総会を開催するようにしましょう。
STEP2:総会の開催前の挨拶
原則として、総会の議長は理事長が務めます。
定刻になったら、理事長が開会の辞を述べましょう。
そして、開会の辞は、下記の事項を必ず含めるようにしましょう。
- 総会の議長は理事長が務めること
- 定足数の報告
- 議事録署名人の指名
初めて総会の司会進行をする理事長の方は、下記の総会の挨拶の文例を参考にしてみてくださいね。
総会開催の挨拶のポイント
- 議長は理事長が務める
- 総会の出席者数は必ず報告する
- 議事録署名人を指名する
STEP3:議案説明→質疑応答→採決
開会宣言の後は、議案に入ります。
基本的には、議案説明→質疑応答→採決の流れで進行しましょう。
議案説明は、基本的には理事長が行いますが、総会をスムーズにする進め方は、要点をまとめて簡潔に説明するのがポイントです。
初めての役員で、総会出席者に議案の内容を理解してもらいたいという気持ちはわかりますが、議案説明が長いと出席者が退屈しますし、そもそも、2週間前に議案書を配布しているわけですから、要点だけ説明するだけで良いのです。
議案説明が終われば、質疑応答に入ります。
あらかじめ、出席者に質問をする場合には、部屋番号と名前を名乗るように伝えましょう。
想定外の質問や即答でいない場合には、下記のように対応します。
- 管理会社やマンション管理士に説明をしてもらう
- 即答できないので後日文書で回答しますと答える
- わかりかねますと答える
私も管理会社時代に、総会を何度も経験していますが、専門家でも答えられないような質問をしてくる方もいらっしゃいました。
そのような場合に、何となく答えると、後から間違った答えをしたことに気づくことになります。
また、質問に対する回答は議事録に記載されることにも注意が必要です。
このように、想定外の質問で即答できない場合には、適当に答えるよりも後から文書で回答したり、管理会社やマンション管理士に回答をしてもらうのが真摯なマンションの総会の進め方であると言えるでしょう。
質疑応答が終了したら、下記のような要領で採決をとります。
「それでは採決をとらせていただきます。」
「賛成の方は挙手をお願いします。」
「反対の方は挙手をお願いします。」
「棄権する方は挙手をお願いします。」
このような形で、採決しましょう。
中には、すぐに手を下ろしてしまう人や挙手しない方もいるので、賛成は数えないで、出席者から反対者と棄権者を引いた数を賛成者数とすると数えやすいです。
集計は、議長以外の理事や管理会社にやってもらうように段取りをしておくのが、マンションの総会をスムーズにする進め方のポイントです。
最後に、集計が終わったら、採決の結果を報告します。
賛成〇〇反対○○棄権○○以上、賛成多数により、本議案は承認されました。
賛成○○反対○○棄権○○以上、賛成が規定数に満たなかったため、本議案は否決されました。
議案説明→質疑応答→採決のポイント
- 議案は要点をまとめて簡潔に説明する
- 想定外の質問や即答できない場合は管理会社・マンション管理士に回答してもらう若しくは後日文書で回答する
- 採決の集計をする人を段取りしておく
マンション管理士の仕事内容については、下記の記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
>マンション管理士ってどんな仕事?|管理業務主任者との違いは?
STEP4:総会の閉会
全ての議案が終了すれば、閉会宣言をして総会を閉会します。
その後、新理事会を開催し、役員の役職を決めるのが一般的な流れです。
マンションの総会をスムーズにする進め方のポイント
議案の内容にもよりますが、マンションの総会は時に荒れることもあります。
ここでは、マンションの総会が荒れない進め方のポイントについて解説します。
議事進行表を作っておく
スムーズに総会の司会進行をするためにも、議事進行表を作っておきましょう。
自分で作るのが面倒なら、管理会社やマンション管理士に事前に議事進行表を作るように指示すれば、作成してくれます。
事前に質問状を送る
総会の議案書と同時に、総会の出席者に質問状を送って質問の内容を記入してもらうのもスムーズに総会を進行するためのポイントです。
質問状を送ることで、事前に総会で質問される内容がわかるので、想定外の質問があってオロオロするリスクを回避できます。
また、出席者も総会で聞きたいことに対し、明確な回答をもらえるので双方にとってメリットがあります。
ただし、質問状を送ることで多くの人が、質問を書いてきた場合、すべての質問に回答しなければならないので手間がかかるというデメリットはあるでしょう。
緊急動議には採決を行わない
マンションの総会で、議案に関係がない動議が出されることがあります。
例えば、ペットの飼育を全面的に禁止している管理規約があり、総会で管理規約を改定し、猫のみ飼育可とする議案があったとします。
そこで、出席者の中から、犬も飼育可にした方が良いという意見が出て、仮に出席者の大多数が賛成だったとしても、安易に採決をとらないようにしましょう。
なぜなら、区分所有法35条により総会の議事はあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができると定められているからです。
これば、総会に出席できずに、委任状や議決権行使書で意思表示をした組合員にとっては不意打ちとなり、不利益になることが趣旨であると言われています。
ただし、以下のような例外はあります。
- 管理規約で動議を認めている場合(普通決議のみ)
- 区分所有者全員の同意があるとき
したがって、まず議案と全く関係ない動議については採決を行わないようにしましょう。
議案と関係がある修正動議は、場合によっては認められることもあるでしょう。
しかしながら、法の趣旨から言っても、委任状や議決権行使書で意思表示をした総会欠席者にとっては、やはり不利益になるかと感じます。
したがって、緊急動議が出た場合は、下記のような対応が望ましいでしょう。
- 議案については、あらかじめ総会議案書に記載のある事項についてのみ採決する
- 緊急動議については、理事会等で検討し必要であれば臨時総会を開催し再度審議する
このように、総会の場で出された動議が、修正動議なのか、それとも全く関係がない動議なのか、普通決議なのか特別決議なのかにもよって判断が変わりますので、その場で判断するのは難しいでしょう。
したがって、緊急動議は採決せず、必要であれば再度臨時総会を開催するというような対応が無難であると言えます。
議案別マンション総会の決議要件とは?
マンションの総会をスムーズに進行するためには、決議要件も頭に入れておきましょう。
ここでは、マンションの総会の決議要件について解説します。
普通決議
マンションの総会の議案のほとんどは、普通決議により決議します。
普通決議の決議要件は、出席議決権の過半数です。
ただし、管理規約に異なる定めがあれば、管理規約に記載の要件となります。
例えば、管理規約によって出席議決権数ではなく、総議決権の過半数となっていることもあります。
主な普通決議事項の例(区分所有法)
- 共用部分の管理に関する事項
- 区分所有者の共有に属する敷地または附属施設の管理に関する事項
- 訴訟追行についての管理者等に対する訴訟追行権の授権
- 管理者に対する訴訟追行権の授権
- 管理者がいない場合の規約、議事録、書面・電磁的方法による決議に係る書面・電磁的記録の保管者の選任
- 理事が数人ある場合の代表理事の選任又は共同代表の定め
- 共用部分の変更(建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修)
特別決議
特別決議は、管理規約改定や著しい共用部の変更など、組合員にとってより重要な事項とされている部分に関しての決議となります。
どのような決議が特別決議に当たるかは、管理規約に記載があります。
そして、特別決議は、区分所有者及び議決権総数の3/4以上の賛成が決議要件となります。
総会に出席した人ではなく、全区分所有者を基準としている点で、普通決議とは異なります。
特別決議の例
- 規約の制定、変更又は廃止
- 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
- 管理組合法人の設立
- 管理組合法人の解散
- 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
- 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
- その他総会において本項の方法により決議することとした事項
- 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
- マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。
マンションの総会の種類は?
マンションの総会の種類は大きく分けて、通常総会と臨時総会があります。
それぞれ、見ていきましょう。
通常総会
年に1回行われる総会を通常総会と呼びます。
基本的には、1年間の決算報告や来期の予算案、管理会社との契約の更新、来期役員選任などを審議します。
臨時総会
必要に応じて適宜行う総会が臨時総会です。
一般的には、理事長が理事会の決議を経て招集する場合が多いですが、監事や区分所有者でも一定の要件を満たせば臨時総会を招集することができます。
例えば、外壁のタイルが今にも剥がれ落ちそうなのに、何か月も先の通常総会まで待っていられませんよね。
このように、急いで決めた方が管理組合の利益になるような場合には、臨時総会を開催します。
マンションの総会の進め方に関するよくある質問
最後にマンションの総会の進め方についてのよくある質問について、解説します。
Qマンション総会は義務ですか?
マンションの総会は、区分所有法で少なくとも毎年1回招集しなければならないとされています。
そして、総会の開催時期は多くの場合、管理組合の会計年度終了後、2~3ヶ月以内に開催するとされていますので、初めて役員になった方は、頭に入れておきましょう。
Qマンション総会の出席率は?
②総会への出席状況〔管10②、管10③〕
出典;政府統計ポータルサイト「2018年度総合調査の結果から見たマンション管理と居住の現状」
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直近の通常総会への区分所有者(委任状及び議決権行使書提出者を含む)の概ねの出席割
合の平均は 82.1%である。
一方、直近の通常総会への区分所有者(委任状及び議決権行使書提出者を除く)の出席割
合の平均は 32.9%であり、総戸数規模が大きくなるほど低くなっており、単棟型と団地型
を比較すると、単棟型が 34.0%、団地型が 27.8%で、単棟型が高くなっている。
国土交通省が実施したマンション総合調査によると、委任状及び議決権行使書を含めた出席割合は、82.1%、実際に会場への出席割合は、32.9%とされています。
Qマンションの理事会と総会の違いは何ですか?
総会とは、マンションの最高意思決定機関です。
株式会社に例えると、株主総会のようなもので管理組合の予算や決算承認、重要な事項に関しては全て総会で決めます。
一方で、理事会とは、管理組合の執行部で株式会社に例えれば、取締役会のような役割を果たします。
基本的には、総会で決まった予算に応じて管理組合の運営を執行するのが、理事会の役割と言えるでしょう。
マンションの総会の進め方についてのまとめ
今回は、マンションの総会の進め方について解説しました。
マンションの総会を荒れないようにするためには、スムーズな司会進行が重要です。
特に、初めて役員に就任した方は、緊張すると思いますが、事前準備をしっかりとして、スムーズに総会を進めるようにしましょう。
本コラムが、初めての総会で不安になっている役員の方の参考になれば幸いです。
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