マンション管理士ってどんな仕事?|管理業務主任者との違いは?
「マンション管理士ってどんな仕事?」と疑問に思っている方は、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
マンション管理士とは、マンション管理の専門家としての国家資格です。
これに対して、同じようにマンションの管理に関係する資格として、管理業務主任者があります。
どちらも国家資格でマンションの管理組合運営に携わるという意味では、共通点もありますが、実は立ち位置が全く違うので注意が必要です。
ここでは、マンション管理士とはどんな仕事?という疑問にお答えすると同時に、マンション管理士と管理業務主任者の違いについても詳しく解説します。
マンション管理士の仕事内容は?|管理組合の需要はある?
マンション管理士の仕事内容は、多岐にわたります。
概ね、マンションの管理組合運営をサポートするのが、マンション管理士の仕事内容となります。
しかしながら、「マンションの管理組合のサポートってどんなことをするの?」というような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
また、同様にマンションの管理に関する資格として管理業務主任者という資格もありますが、マンション管理士と管理業務主任者の違いについて良くわからないという方も多いのではないかと推察します。
ここでは、マンション管理士の仕事内容と管理業務主任者の仕事内容の違いを下記の通り、具体的に紹介します。
- 管理組合の相談業務|理事会支援・総会支援
- 管理規約の作成、改定業務
- マンションの大規模修繕計画の作成や診断
- 管理会社の管理委託業務のチェック
- 自主管理支援
- その他、マンション管理のことなら何でも相談できる
管理組合の相談業務|理事会支援・総会支援
マンション管理士の仕事は、マンション管理組合のサポートです。
マンション管理士の仕事内容として、管理組合の相談業務があります。
まず、マンションに住んでいらっしゃる方であれば、わかるとは思いますが、快適で住みやすいマンションを維持するためには様々なことを考えていかなければなりません。
そして、マンション管理組合の意思決定は、総会で行われます。
総会で承認された理事が理事会を構成し、執行部として管理運営を行っていくというのが、一般的なマンションの組織図となります。
次に、理事会の業務は、原則としては総会で決められた予算内で管理組合運営を行いますが、マンションでは、修繕、管理費等滞納問題、住民トラブルなど様々な問題が日々起こります。
そして、理事会のメンバーは通常、マンションの区分所有者ですから、時には一般的な人ではわからない問題も出てきます。
そのような場合に、マンションの専門家であるマンション管理士が理事会に参加していれば、マンション管理組合運営の難しい問題に対してサポートを受けることができます。
中には、「マンション管理会社のフロントマンがサポートしてくれるのだから、マンション管理士は不用」という意見の方もいらっしゃるかと思います。
確かに、理事会支援業務|総会支援業務は、マンション管理会社の仕事の中に入っています。
ただし、マンション管理会社が必ず適切なアドバイスをくれるわけではありません。
管理会社のフロントマンが会社に評価されるのは、
- 他の社員よりも物件数を多く持つこと
- 会社の利益となる工事などを受注すること
です。
つまり、管理会社の社員として優秀なフロントマンは、管理組合様にとってよい提案でも自分の負担が増えて会社に利益のないような提案はしません。
中には、本当に管理組合のためを思って、いろいろな提案をしてくれるフロントマンもいるかと思いますが、多くはないでしょう。
これは、管理会社のフロントマンが悪いわけではなく契約上必要な時に理事会の助言をするというようになっていますし、たくさんの物件を抱えている管理会社のフロントマンは、利益にならないことはやりたくないのが本音ではないでしょうか。
本当の意味で管理組合の側に立って、適切なアドバイスを行うことがマンション管理士の理事会・総会支援業務です。
管理規約の作成、改定業務
管理規約とは、「マンションの憲法」とも呼ばれるマンションのルールのことです。
マンションの区分所有者は、自分の家だから何をやっても良いわけではなく、集合住宅に住んでいらっしゃる方がそれぞれ、不公平がなく快適に暮らすことができるように全体のルールが必要です。
そして、法律がそうであるように、マンションのルールも時代とともに変えていく必要があるケースもあります。
ただし、管理規約も法律に適合している必要がありますし、現行の管理規約を改定するには、総会の特別決議が必要です。
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約では、特別決議は下記のような要件とされています。
(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有す
る組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合
員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わな
いものを除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴
えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部
分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
このように、管理規約の改定には厳しい要件が課されているのが一般的ですので、マンションの区分所有者との合意形成が重要になります。
上記のような、管理規約の改定についての法的な問題を精査し、助言を行うこともマンション管理士の重要な役割です。
マンションの大規模修繕計画の作成や診断
マンションに限らず、建築物は経年とともに、劣化していくものです。
そして、マンションの資産価値を落とさないためには、定期的に修繕を行う必要があります。
しかしながら、大規模修繕工事は、基本的には修繕積立金から支出しますが、多くのマンションで修繕積立金不足が問題となっています。
これには、下記のような要因が考えられます。
- 分譲時に適切な長期修繕計画が策定されなかった
- 過去に割高な工事や不適切な工事を実施してきた
- 長期修繕計画は存在するものの、過去計画通りに修繕積立金の値上げに踏み切れなかった
このように、修繕積立金が足りなくなるケースには様々な要因が考えられます。
それでは、修繕積立金が足りなくなった場合に、どのような方法で問題解決するのかは、やはりマンションの専門家に相談することで、適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。
このような問題の解決方法は、一つではなく、例えば、下記のように様々な方法によって行います。
- 修繕積立金を値上げする
- 最低限必要な修繕だけ実施する
- 借り入れをする
- 修繕しない
また、いざ大規模修繕工事を実施するとなった際には、施工会社を選定する必要があります。
さらに、マンションの大規模修繕工事の取り組み方についても下記のように、いくつかの方法がありますので、精査が必要です。
施工方式 | 特徴 |
---|---|
責任施工方式 | 管理組合で施工会社を選定し、設計から監理までを全て委託する方式 |
設計管理方式 | 第三者のコンサルタントを採用し、設計と施工を分離する方式 |
管理会社主導方式 | 管理会社にすべてをお任せする方式 |
このように、大規模修繕の取り組み方についてもいくつかの方法があり、それぞれのメリット・デメリットがあります。
また、マンションの大規模修繕工事は多額の資金が投入されるので、業者の見積もりの精査も必要です。
そして、これらのすべてを管理組合が実施しようとするなら、多くの時間と労力を要しますし、マンションの区分所有者への説明、合意形成もしていかなくてはならないので大変ですよね。
上記のような、大規模修繕計画の作成や診断についてのアドバイスを行うこともマンション管理士の仕事内容です。
管理会社の管理委託業務のチェック
多くのマンションは、管理会社と管理委託契約を締結し、管理を管理会社に任せています。
管理組合と管理会社は、管理委託契約を締結し、契約内容に沿った仕事を管理会社が行うことになっているはずですが、実際に管理委託契約書に沿った業務が行われているのかという点については、しっかりとしたチェックが必要です。
そして、管理委託費の金額も委託している業務に対して適切な金額かどうかを判断しなければなりません。
近年、多くの管理会社が管理委託費を値上げを提案する傾向があります。
もちろん、人件費の高騰など時勢を考えれば、致し方ない部分はあるとは思いますが、それでもしっかりと業務内容と業務委託費が合っているかをチェックすることが重要です。
場合によっては、管理会社を変えることで大きなコストメリットを得ることができるでしょう。
自主管理支援
自主管理とは、マンション管理会社に委託せずに、マンションの区分所有者だけで管理組合を運営する方式のことを指します。
そして、自主管理にすることで下記のようなメリット・デメリットがあります。
マンションを自主管理するメリット |
---|
・マンション管理会社に管理委託費を支払わなくてよいのでコスト削減できる ・住民の管理の意識が向上する ・コミュニティを形成しやすい |
マンションを自主管理するデメリット |
---|
・トラブルに対する初期対応が遅くなりがち ・役員が大変 |
どちらも、メリット・デメリットがありますが、管理委託費を大きく削減できることが自主管理の大きなメリットでしょう。
役員の方は大変ですが、管理委託費を削減することで、余剰金を修繕などに使うことができるので適切な修繕を行うことができます。
特に、出納関係を管理組合役員でまかなうのはとても大変な仕事なので、自主管理は敬遠されてきましたが、最近ではイノベリオス株式会社が提供する「クラセル」など管理組合会計をアプリで行なうことができるようになりました。
自主管理で最も煩わしい会計管理の部分をアプリで行なえるようになったことで、自主管理へのハードルは下がったと言えるでしょう。
会計管理アプリ「クラセル」を利用した自主管理もマンション管理士がサポートすることで、役員への負担を軽減することができます。
「自主管理にしたいけど、役員の負担を減らしたい」「自主管理でもサービスの質を落としたくない」「自主管理への移行期間としてマンション管理士のサポートを受けたい」このような管理組合様は、会計管理アプリ「クラセル」にマンション管理士のサポートをつけることで、適切なマンション管理を実現できます。
マンション管理士かなざし事務所は、クラセルのサポーターとしても業務を行うことができるマンション管理士事務所です。
静岡県東部(沼津~伊豆)・中部、神奈川県西部(小田原~箱根エリア)でマンション管理士をお探しの方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
その他マンション管理のことなら何でも相談できる
マンションの管理組合の役員は、大変です。
なりたくて役員になったわけでもないのに、住民からのクレーム対応やマンションの会計、建物や設備の修繕などマンションの管理組合運営は多岐にわたります。
「管理規約を役員になって初めて読んだ・・」なんて方もいらっしゃるでしょう。
特に、役員の交代時に前理事会から引継ぎがない場合などは、何が何だかわからないということにもなりかねません。
このような場合に、マンション管理のことならなんでも相談できる相談窓口として役割もマンション管理士の業務のひとつです。
静岡県伊豆にあるマンション管理士かなざし事務所は、リゾートマンション管理を得意としているマンション管理士事務所です。
マンション管理のことなら、どんな相談でも気軽にお問い合わせください。
マンション管理士と管理業務主任者の違いは?
マンション管理士の業務内容について、ここまで解説してきましたが、同じようにマンションの管理に関する国家資格として管理業務主任者があります。
ここでは、マンション管理士と管理業務主任者の違いについて解説します。
マンション管理士と管理業務主任者|業務内容の違いは?
マンション管理士と管理業務主任者は、マンションの管理運営に関する国家資格という点で共通点があります。
そして、マンション管理士と管理業務主任者の大きな違いは、立ち位置の違いがあります。
まず、マンション管理士は管理組合側の立場でマンションの管理組合運営について助言を行う仕事です。
これに対し、管理業務主任者は管理会社側の立場でマンションの管理委託契約の締結の際に、重要事項説明を行うことができる資格です。
つまり、マンション管理士は管理組合側の立場で、管理業務主任者はマンション管理会社側の立場であるという点がマンション管理士と管理業務主任者の大きな違いであると言えるでしょう。
マンション管理士と管理業務主任者|試験内容の違いは?
まず、マンション管理士の試験の内容は、下記の通りです。
次に、管理業務主任者の試験内容は以下の通りです。
出典;一般社団法人マンション管理業協会ホームページ「令和5年度受験申込案内書」
上記の通り、試験内容についてはほぼ同じです。
その他、合格率等に関しては、下記の表をごらんください。
試験実施期間 | 合格率 | |
---|---|---|
マンション管理士 | 公益財団法人 マンション管理センター | 10.1% |
管理業務主任者 | 一般社団法人 マンション管理業協会 | 21.9% |
上記の表の通り、マンション管理士は「公益財団法人マンション管理センター」が実施し、管理業務主任者は「一般社団法人マンション管理業協会」が実施します。
そして、令和5年度の合格率は、マンション管理士が10.1%、管理業務主任者は21.9%です。
どちらも難関国家資格ですが、マンション管理士の方が難しいとされています。
マンション管理士は独立型の資格
マンション管理士は、独立型の資格とされていて、「名称独占資格」です。
つまり、マンション管理士でしかできない仕事はないけれども、マンション管理士と名乗って仕事をするのは、資格がないとできません。
このように、マンション管理士は、管理会社の社員として働く資格というよりは、管理組合側のコンサルタントとして独立する方向けの資格となっています。
管理業務主任者は管理会社の社員が持つ資格
管理業務主任者は、重要事項説明を実施する時に必ず必要な資格です。
マンションに住んでいらっしゃる方なら、管理会社の社員が通常総会で重要事項説明を行っている姿を見たことがあるのではないでしょうか。
重要事項説明は、管理会社の管理委託契約締結時、又は更新時に必要な説明ですから、管理業務主任者は管理会社の社員として働くのに必要な資格という性質が強いです。
また、マンション管理業者は管理組合の事業年度の終了後、遅滞なく、管理事務の報告をしなければなりません。
この管理事務報告も管理業務主任者しか行うことができない業務とされています。
さらに、マンション管理業者は、成年である専任の管理業務主任者を30管理組合につき、1人以上の割合で設置する義務があります。
このように、管理業務主任者は、管理会社の社員が持つ資格として重宝されます。
マンション管理士の仕事内容は?についてのまとめ
マンション管理士は、管理組合の側に立って管理組合運営をサポートする仕事です。
一方で、管理業務主任者は、管理会社の立場で重要事項説明などの業務を実施するために必要な資格です。
このように、マンション管理士と管理業務主任者の違いは、立ち位置の違いがあります。
マンション管理士の仕事内容は、理事会総会支援、会計補助、自主管理支援、大規模修繕工事サポート、管理規約の改定など多岐にわたります。
マンション管理組合運営の主体は、あくまで管理組合ですが、管理組合運営のサポートをするのがマンション管理士の仕事内容です。
静岡県伊豆エリア、東部、中部エリア、神奈川県西部(箱根、小田原)エリアでマンション管理士をお探しの方は、かなざし事務所までお問い合わせください。
マンション管理組合側の立場で、管理組合運営をサポートします。
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